2chで噂の最も怖い話・・・「リゾートバイト」

実話・体験談


Aが催したのだ。
生理現象だから絶対に避けられないと思っていた。
Aは自分のズボンのポケットから坊さんに貰った布の袋をゴソゴソと取り出すと、立ち上がって俺達から少し離れた。

静寂の中、Aの出す音が響き渡る。
なんか、まぬけな音に若干気が抜けて、俺もBも顔を見合わせてニヤっとした。

その瞬間だった。

「Bくん」

AB俺(・・・)

一瞬にして体に緊張が走る。
するとまた聞こえた。俺達がおんどうに入った扉のすぐ外側からだった。

「Bくん」

俺達は声の主が誰か一瞬で分かった。
今朝も聞いた、美咲ちゃんの声だった。

「Bくんおにぎり作ってきたよ」

こちらの様子を伺うように、少し間を空けながら喋りかけてくる。
抑揚が全くなく、機械のようなトーンだった。
Bの手にぐっと力が入るのが分かった。

「Bくん」
「・・・」

しばらくの沈黙の後、突然関を切ったように

「Bくんおにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ~」
「おにぎり作ってきたよ」
「Bくん」
「いらっしゃいませ~」
「おにぎり作ってきたよ」
と同じ言葉を何度も何度も繰り返すようになった。

尋常じゃないと思った。
恐かった。美咲ちゃんの声なのに、すげー恐かった。

坊さんはおんどうには誰も来ないと俺達に言っていた。そしてこの無機質な喋り方だ。
扉の外にいるのは、絶対に美咲ちゃんじゃないと思った。

気づくとAが俺達の側に戻り、俺とBの腕を掴んだ。
力が入ってたから、こいつにも聞こえてるんだと思った。

俺達は3人で、おんどうの扉の方を見つめたまま動けなかった。
その間もその声は繰り返し続く。

「いらっしゃいませ~」
「Bくん」
「おにぎり作ってきたよ」

そしてとうとう、扉がガタガタと音を出して揺れ始めた。

おい、ちょ、待て。

扉の向こうのヤツは扉をこじ開けて入ってくるつもりなんだと思った。
俺は扉が開いたらどうするかを咄嗟に考えた。
(全速力で逃げる、坊さんたちは本堂にいるって言ってたからそこまで逃げて・・おい本堂ってどこだ)
とか。もうここからどうやって逃げるかしか考えてなかった。

やがてそいつは、ガンガンと扉に体当たりするような音を立てだした。
無機質な声で喋りながら。

そしてそのまま少しずつ、おんどうの壁に沿って左に移動し始めたんだ。
一定時間そうした後にまた左に移動する。その繰り返しだった。

(何してるんだ・・?)

不思議に思っていると、俺はあることに気づいた。
俺達のいる壁際には隙間が開いている。そしてそいつは今そこにゆっくりと向かっている。

(もし隙間から中が見えたら?)
(もし中からアイツの姿が見えたら?)

そう考えると居ても立ってもいられなくなり、俺は2人を連れて急いで部屋の中央に移動した。
移動している。ゆっくりと、でも確実に。
心臓の音さえ止まれと思った。ヤツに気づかれたくない。
いや、ここにいることはもう気づかれているのかもしれないけど。

恐怖で歯がガチガチといい始めた俺は、自分の指を思いっきり噛んだ。
そして俺は、隙間のある場所に差し掛かったそいつを見た。
見えたんだ。月の光に照らされたそいつの顔を、今まで音でしか感じられなかったそいつの姿を。

真っ黒い顔に、細長い白目だけが妙に浮き上がっていた。

そして体当たりだと思っていたあの音は、そいつが頭を壁に打ち付けている音だと知った。
そいつの顔が、一瞬壁の隙間から消える。外でのけぞっているんだろう。
そしてその後すぐ、ものすごい勢いで壁にぶち当たるんだ。

壁にぶち当たる瞬間も、白目をむき出しにしてるそいつから、俺は目が離せなくなった。
金縛りとは違うんだ、体ブルブル動いてたし。
ただ見たことのない光景に、目を奪われていただけなのかも知れないな。
あの勢いで頭を壁にぶつけながら、それでも淡々と喋り続けるそいつは、完全に生きた人間とはかけ離れていた。

結局、そいつは俺達が見えていなかったのか、隙間の場所でしばらく頭を打ち付けた後、さらにまた左へ左へと移動していった。
俺の頭の中で、残像が音とシンクロし、そいつが外で頭を打ち付けている姿が鮮明に想像できた。

正直なところ、そいつがどれくらいそこに居たのかを俺は全く覚えていない。
残像と現実の区別がつけられない状態だったんだ。
後から聞いた話だと、そいつがいなくなって静まりかえった後、3人ともずっと黙っていたらしい。

Aは警戒したから。
Bは恐怖のため動けなかったから。
そして俺は残像の中で延長戦が繰り広げられていたから。

そんでAが俺を光の場所へ連れていこうと腕を掴んだ時、体の硬直が半端なくて一瞬死んだと思ったらしい。
本気で死後硬直だと思ったんだって。
BはBで、恐怖で歯を食いしばりすぎて、歯茎から血を流してた。
Aだけは、やっぱり姿を見ていなかった。

あと、そいつはそこから遠ざかって行く時カラスのように「ア゛ーっア゛ー」と奇声を発していたらしい。その声は、Aだけが聞いていたんだけど。
そいつの2度の襲来によって、その後の俺達の緊張の糸が緩むことはなかった。

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